プレミアムエイジ ジョインブログ
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Posts from — 4月 2016

あるシステム統合(28)

  11月初旬から僕がF社の事務センターに詰め切っていたことで、今回のシステム統合(H・F併存型)の進捗は僕自身、手に取るように分かったし、その中で担当のSE達が判断に迷った時など、僕や対策本部メンバーから速やかに指示が出せるので、物事はスピード感を持って動いているという感触があった。

  これが、前半のF寄せシステム統合では全く感じられなかった。古典的なマネージメント手法ではあるものの、全く面識のなかったF社SE達と、同じ釜の飯を食いながら開発の現場で大規模システム開発の指揮を執ることの大切さを再認識させられたことでもあった。

  だが、僕がF社に常駐し始めて数週間経った頃、F社のA次長は僕にこうこぼした。「C部長からまた文句を言われたんですよ」「何について?」「対策本部の場所はF社とH社交互にすべきではないか、と言うんです」「へぇ」「神童さんがこの事務センターを乗っ取ったみたいに思っているんです」。

  またCかと思いつつも、それでAが困っているならと、「なるほど。じゃ、来月はHの事務センターにしようか?」と1ヶ月交代を打診してみた。

  それに対してA次長は次の理由で否定した。「H社側のSEの皆さんは、神童さんを良く知っていますが、F社側は全く知りません。その上『F寄せ』で頑張ってたら急に『併存型』だと方針が変ってしまい、一体どういうことだ、となったんですが、その方針変更の張本人が神童さんだと聞いて、不信感を抱いたSEも少なくなかったのです。

  今回、対策本部に呼ばれ者達は、神童本部長と話してみて、合併に間に合わせるために必死なんだと良く分かった、とか、神童さんと議論が噛み合って良かったとか、安心したとか言う者が多いです。これはF社側の志気高揚の観点で凄く重要です。なので、是非このままここで対策本部を続けて、気楽に担当SEをどしどし呼んで、何でも聞いてやって下さい」。

  だからと言って、F寄せ当初から僕がF社に乗り込んでいても、占領軍のように見られて旨くは行かなかったと思う。今、会社の壁を乗り越えて一体感を持って対策本部が機能しているのは、やはりF寄せ失敗という現実と、システム部門の名誉に賭けても次は絶対に失敗できないとの強い危機感が、両社システム部門の執行部に心の底から共有されたことが大きいと思う。

  両社システム部門の雰囲気は前半戦に比べると様変わりに良くはなったが、僕自身6ヶ月と見積もっていた「併存型システム統合」が実は着手が1ヶ月遅れ、残り5ヶ月を切っていたのだから、はなから、間に合うかどうかが危ぶまれる危険が一杯のリベンジ・マッチだった。  

  そこで、対策本部も各ラインも、可能な限りシフト制を敷き24時間態勢で開発を行う方針とし、両社事務センターは文字通りの不夜城と化したのだった。

  そんな状況だったから、本社部門から要請されても、僕が本社の会議に出席出来るのは午後9時過ぎと言う場合が多かった。F社事務センターからH社の本社まで移動時間が小一時間掛かるので、会議は夜10時からとなった。

  会議が深夜1時に終わって、気が付けば夕食も取っていないことに気が付き、会議の出席者と一緒にそれからアルコール入りの食事となり、帰りは都心からタクシーで午前3時過ぎの帰宅というようなことに相成るのだった。

  11月中に詳細設計を全て終え、12月から全ライン開発に突入して行った。大凡のスケジュールは、2001年1月末までの2ヶ月間で開発を終え、2月サブシステム単位の総合テスト、3月は全システムの正常稼働の確認を行う本番リハーサル・テストの予定を組んでいる。

  12月末の時点では、例外もあるが概ね予定通りに進捗していた。そして、今ラウンド僕が最も注意していたのは、H・F両社SE間の思い違いや理解不足による作業の後戻りの発生だった。F寄せの開発フェーズの最後に来て、計画が挫折したのは、正にこの点だったから。

  結果的にこのことが再び起きることはなかった。可笑しなことながら、成功体験ではなく、F寄せ失敗が両社の技術者達に危機感を共有させ、お互いの昼夜を問わない頑張りが一体感を醸成し、2度目の後戻りは避けられたのだ。

  因みに、開発スケジュールに関して言えば、「F寄せシステム統合」と「併存型システム統合」では大きな違いがある。それは、現業部門(営業店等)によるリハーサル・テストの要不要だ。

  「F寄せシステム統合」では、H社の事務担当者はF方式の事務を覚えなければならないし、一方、F方式を基本に置くものの、Fシステムに新規開発する「分割払い保険料管理システム」や「H代理店システム接続」などがあり、そちらはF社事務担当者が知らなければならない事務なので、システムのテストの他に、正月明けからの3ヶ月間の現場事務のリハーサル・テストが不可欠となっていた。

  しかし、両社のシステムが併存することになったのだから、夫々の事務は合併前と何も変わらないし、精通した事務担当者が存在する前提で行けるので、現地テストは不要だった。

  逆に言えば、1月~3月の現場テストが不可欠であるなら、12月末までに「併存型システム統合」の総合テストも終わらせておかなくてはいけないから、全くもって不可能だった。3月末までにシステムが総合テストを終えていれば問題はなかったので、このコンティンジェンシー・プラン発動が可能だったのである。

  しかしながら、現地事務リハーサル・テストを行わなかったことが、想定外の混乱を引き起こすことになるとは、この時は知る由もなかった・・・

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4月 28, 2016   1 Comment

あるシステム統合(27)

  3者会談では、僕はシステム統合の勝負どころとなる1月~3月は、新商品のシステム化など行う余裕はとてもないこと、今度こそ間に合わなかった合併出来ない事態になること、合併出来なければ記念商品どころの話ではないこと、合併記念商品は合併3か月後の7月1日発売として欲しいこと、などを商品開発部長(後の副社長)と営業推進部長(後の社長)に訴えた。

  商品部の部長は、金融庁への商品認可は12月下旬には下りそうなことを伝えてから、通常だと2ヶ月くらいで新商品をシステム化して貰って来たが、システム統合で大変なことは理解しているので、3ヶ月超の期間を取ったつもりだと言う。

  そう言われても、システム統合の作業をディスターブするような要望は一切受けられないと突っぱねた。システム統合が出来なかったら、折角の新商品も幻になるでしょうと繰り返して2人を説得しようとした。

  営推部長が口を開いた。「神童さん、お言葉ですけど、新商品無しで新会社の営業の旗は振れません。システム側の事情が分かりますが、システム統合と並行して、別部隊による新商品システムの開発の可能性は全くないのですか? 是非前向きに可能性を追求して下さいよ。お願いします」と。

  僕は「やってあげたいのは山々だけど、システム統合が確実に間に合う見通しにならない限り、そちらにロードは割けないこと、分かってよ」と懇願調で言った。ところが営推部長は思わぬカードを切って来た。

  「新商品に戦力は割けないと言われますが、F社の商品部の話ですと、Fシステムの自動車保険チームは、今回の『併存型統合』では、あまり出番がないらしいじゃないですか」と。

  この指摘に対して、対策本部メンバー(F社)は、「いえ、それは違います。商品システム自体は今のまま合併後も稼動させるので、今回のシステム統合対象ではないですが、1月~3月は、システム全体が正しく動くのか、幾つものテストを行う予定なので、それと新商品システムのテストがかち合うのは非常に好ましくない状況となります」と答えた。

  営推部長は、発言した彼の方ではなく僕を見て言った。「今回、商品システム自体が統合の対象なら事情は分かりますよ。3月31日に動いていたシステムが、4月1日にもそのまま変わらず動くんですよねぇ?」。「その通りだけど?」と僕。

 彼は一度肯いてから続けた。「ただ念のため、システム統合の最終段階で何も変更しない商品システムが正しく動くかをチェックするんでしょ? そのことが新商品のシステム開発が出来ない理由になる理屈がサッパリ分かりません!」。

  「やるな、お主!」と腹の中では思った。確かに平常時なら僕自身が担当チーム長に強く言ったであろう台詞だからだ。だが、F寄せに失敗し、ラスト・チャンスを与えられた立場の僕は、今度こそ何が何でも成功させたいと思っているので、システム統合に関係ないことは全て拒否をしたい。まぁ、多分に防衛的・保守的心情になっていたことは認めよう。

  F社のシステム子会社の組織に「自動車グループ」がある。僕は対策本部メンバーに、自動車グループは3月末までの4ヶ月、何か大きいテーマを抱えているのかを確認した。答は「通常の細かいメンテナンスはありますが、システム統合の総合テスト以外は無いと思います」だった。

  僕は2人の部長に言った。「営推部長の言うように、全く不可能という状況でもなさそうだね。要望を受け入れることにしよう」。

  そして、ある条件を付けた。「但し、3月はデッド・エンドの月なので、何があっても良いようにシステムの全軍はシステム統合のテストや他チームの応援や緊急対応などのため他の一切の業務を外す。

  従って、合併記念商品のシステム開発は1月・2月の2ヶ月でやり切ることとしたい。ついては、遅くも12月末までに、認可は勿論、システム開発に入るに足る詳細仕様が固まっていることを条件とするが、それで良いか?」と商品部長に聞いた。彼は「それで結構だ」と請け負った。

  しかし、この時の僕の判断の甘さ、否、判断の誤りが、合併後の大混乱を巻き起こすことになるとは、この時夢にも思わなかった。

          

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4月 26, 2016   1 Comment

あるシステム統合(26)

  連日のように、両社各ラインのチーフSEを対策本部に呼んで、こちら側の山のように抱えた質問をぶつけ、彼等が答えられないことは、もっと若い担当SEにも同席して貰って一つひとつ解明して行った。

  目的は勿論「併存型システム統合」の実現に向けたシステム開発のためのヒヤリングであるが、そういうことを1ヶ月も行うとFシステムの全貌と、ある程度の詳細が分かって来るものだ。こんなことだったら、最初の2ヶ月くらい掛けてこういう形のヒヤリングをしてから、システム統合作業に入った方が確実だったかなと、思わないではなかった。

  しかし今は、一度失敗した後であり時間もない中、当初とは切迫感がまるで違うし、「併存型システム統合」という明確な目標や青写真があって質問しているので、理解が早いのだろうと思う。

  11月末には、ほぼ全ての詳細設計を終え、12月からは両事務センター総動員で開発フェーズに突入出来たのだった。それでも、プログラム修正や新たな開発が必要な個所は決して少なくないので、3月末までに全てのテストを終えるのに楽観は全く許されない状況ではあった。

  その間も、僕等対策本部のメンバーの携帯には頻繁に問合せの電話が架かって来る。HもFも基本は従来通り稼働させるので、会社として一本化しないといけない経理システムや成績システムなどを除き、本社部門への影響はそれ程多くないと思っていた。

  が、実際は、今のこのシステム機能は変わらないのか、変わるならどう変わるのか、とかの確認や、現場の事務が2本立てになるのは已む無しだが、システムの直しが簡単ならせめてこれを一本化してくれないかなど、本社部門からの個別要望の電話が多い。

  合併が数か月後に迫ると、各部門も、現実的具体的に細部に亘り合併後の日常運営を考えるようになったせいだろうか。個別要望は、原則お断りしたが(合併後再検討とする)、僕等も確かに会社として対外的にこれは一本化しないと拙いというものに限っては対応することにしている。

  勿論、本質的に一本化が必要なシステムの所管部の経理部や営業成績管理部署には、対策本部から 問合せやら要望やらの電話を入れることも多く、対策本部のメンバー10人が全員電話していることも稀ではなかった。

  そんな中、11月下旬に僕宛てに商品開発部の部長から電話があった。話しは4月の合併新会社のスタートに合わせて自動車保険の新商品を発売したいとのことだった。僕は「一寸待ってよ。システムは今、合併に間に合うか否かで必死なんだよ。新商品出すなら合併後数ヵ月してからにしてよ」と答える。

  商品開発部の部長は「それは分かってるんだけど、営業推進部がそれなしでロケット・スタートは有り得ないと一点張りなんだ」という。確かに、今次合併に賭けるトップの意気込みは承知している。

  ただ、トップも営業にハッパを掛けることとシステムとが結び付いていないのだろうと思い、「では、営推部長を含めて3者会談をしよう。そこで、こちらの状況を説明したい」と提案した。

  12月初めに3者会談は設定された。参加者は商品・営推両部長と、僕はF側対策本部メンバー2名を連れて参加した。新商品をシステムに載せるにしても、それは流石にF・H両方のシステムに載せるバカはいない。合併後、直ぐに取り掛かる腹積もりの商品システムのF寄せ(凍結はしたが完成に近付いている)を再開するのだから、新商品はFシステムに搭載すべきことは明白である。それでF側メンバー2人を伴った。

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4月 26, 2016   No Comments

奈落記念日

奈落記念日

 

雑踏の中の孤独

喧噪の中の静寂

絶頂の中の空虚

あれは奈落記念日

 

陽光が暗黒の太陽に変わる時

周囲と己を隔てるもの

それは己の心

それは心のバリア

 

真実って何だ

あの一瞬一瞬は嘘幻か

錯誤の記憶と記憶の錯誤

主観と客観の相克

 

思い込みは強さ

錯覚の幸せ

覚醒の時の落差

思い込みは弱さ  

 

雑踏の中の孤独

喧噪の中の静寂

絶頂の中の空虚

あれは奈落記念日

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4月 23, 2016   No Comments

あるシステム統合(25)

  A次長が怒気を含んだ声で言った。「そもそも今回、F寄せを凍結して併存型に切り替えたのは、F寄せで『分割払い保険料管理システム』が間に合わないとの結論になったことが直接の理由だ。そのシステムを動かすには現行のHシステムをそのまま稼働させるしかないんだよ」「F社も同じ損保としてそれ無しでやって来れたのですから、H社にとっても必須ではないんじゃないでしょうか?」。

  A次長は遂に怒った。「Gはこの半年間何してたんだ。そんな議論は5月迄に終えている。逆にH寄せでも、T自動車向けシステムが不可欠というのと同じくらいに不可欠なんだよ!」と。

  不思議なことながら、他のF社の本社システム部門の出席者は一言も発しない。4月・5月の議論からもう一度再開して、彼らのイメージしているシステムが完成するのは一体いつになるのやら。内容に切迫感が全く感じられない対案だった。ハッキリ言ってH社のシステム部門だったら入社2~3年生でももっとマシな案を持って来る。

  Lが更に追い打ちを掛けた。「合併が出来るかどうか、システム部門が 戦犯になるかどうかの瀬戸際だと言うのに、あなた方はこんなくだらない議論をしていたんですか!」と一喝したのだった。僕の発言は殆ど必要ない。なかなか良い司令塔になって来たと、僕はそのことを秘かに喜んだ。

  大勢が決したところで、僕はZ常務に感謝をしながら締め括りに入った。「Z常務以下、情報システム統括部の皆さんに、何とか我々のこれまでの苦労を無駄にしないよう、F寄せ方針のままで合併に間に合わせられないか、真剣に検討して頂いたお気持ちには心から感謝致します。

  しかしながら、その案で行くとすれば、新しいリスクが2つ発生します。1つには、その案では今度こそ絶対に間に合うという確信が持てないこと、2つ目は、その形では合併後、半分の代理店、即ち、H社代理店と営業担当者から間違いなく大ブーイングが巻き起こります。

  私はシステム統合の責任者として、残念ながら、この2つのリスクを取ることは、とても出来ません。それともC部長、貴方が直接指揮を執ってその案を実施に移しますか?」と、ここまで一言もしゃべらないCに訊ねた。Cは「いえ」と小声で答えただけだった。

  僕は続けた。「折角のご提案でしたが、どうかお納めください。そして、私達対策本部メンバーも、この数日間、合宿まがいの集中設計会議を行なって纏めた内容を皆さんにも是非知っておいて貰いたいので、ご説明の時間を頂戴したいと思います」と伝え。A次長に説明して貰った。

  Z常務は、もしかしたら思惑が外れたのかも知れないが、それで間に合わせられるなら、両社の現場にとって最も良いことかも知れないとの感想を引き出した。これまでC部長から僕やKのことがかなり歪められて耳に入っていたことは想像に難くない。

  曰く、H社はシステムの主導権を失いたくないのでF寄せを強引に凍結した。曰く、神童もHシステム育ちなので、Hシステムが無くなったら、合併後の居場所もなくなるからHシステムを生き延びさせようとしている等など。

  あの怪文書を見れば、そんな人物像に仕立て上げられていたのは手に取るように分かる。だか、Z常務に来て貰って、対策本部が必死で合併に間に合わせる算段を検討して、物凄いエネルギーで取り掛っていることを分かって貰えたのは大きなメリットだったと思った。

  本当に思惑が外れたのはC部長だったろう。これで多分、F社内のシステム統合に関する妙な不協和音は消えるのではないか。さぁ、明日からは雑音を気にせず一瀉千里、5ヶ月を駆け抜けるぞ!

  オッとぉ、時計を見たら午前3時だ。明日は朝一番で何人かの担当SEを対策本部に呼んでいる。早く帰って寝なければ。

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4月 21, 2016   No Comments

あるシステム統合(24)

  さて、対策本部発足の初日(11月6日)の午後、僕に連絡が入り、F社のシステム担当役員(常務)を含めたシステム部門の代表者が、僕等H社側のシステム・メンバーと重要な打合せを行いたいと言って来た。時間は少し遅いが夜10時頃、F社事務センターに伺うとのことだった。

  これまで半年以上が経つが、僕が対応したF社の人間は、大部分が本体からF社システム子会社に出向しているSEだった。一応F社の組織図など初期の頃に説明はあったが、我がH社の伝統でもあり癖でもあるが、大仕事をやるには組織より人物重視という目で見ていたから、A次長とその部下達で充分と考え、相手社の組織のことはあまり深く考えたことはなかった。

  しかし、F社本社にはちゃんと情報システム統括部というシステム部門があって、あのC部長は実はそこの部長だったことをこの時思い出したのである。

  対策本部のF社メンバーに聞くと、現行システムは全ての運営を子会社が任されていて、情報システム統括部は新規の戦略システムなどを検討するのが分掌事項なのだそうだ。だから、当初からシステム統合については子会社(の出向社員中心)に任されていたという訳だ。

  その情報システム統括部が担当役員と一緒に現れると言う。何か不穏な空気を感じてA次長に正した。Aは、「僕らはこの数日、神童さんの下で新方針の対策や設計を缶詰でやって来ましたが、どうも、本社は本社で善後策を集中論議していたみたいです。私の部下のGがそちらに招集されたので、何となく分った程度ですが・・・」と申し訳なさそうに答えた。

  ヒョッとしたら、僕らと同じような内容の検討をしたということかも知れない。まぁ、申し出を拒む理由はないとして、別の会議室で対策本部メンバー全員でお話を伺うことにした。こういう場面では不可欠のKにも来て貰うことにした。

  会議の冒頭、F社のZ常務取締役が口火を切った。「F寄せをやめて併存型統合に切り変えるということが、私どもにはどうしても理解出来ないので、知恵を絞ればF寄せのまま合併に間に合わせる方法があるのではないかと、この数日間システム部門に検討して貰って来た。その結果、何とか行きそうとの結論が出たので、是非皆さんに、その方法を聞いて貰いたい」とのことだった。

  やれやれだ。何故なら、先週の「経営統合実行委員会の拡大会議」で既に結論を得たことではないのか。こんな夜遅く説明を聞くだけ時間の無駄だとは思ったが、F社の誇るシステム部門がどの程度の検討をしたのか、そのレベルを知るには良い機会かもしれないと無理やり自分を説得して、説明を聞くことにした。

  説明役は何とG(子会社出向者)で、本体のシステム部門の人間ではないのだった。ずっと黙って聞いていたが、内容は技術論に終始していて、例えば、H社の営業店事務システムとその延長線上にある代理店システムは、OCRで保険申込書を読ませ、中央のコンピューターでも同等の機能は開発すれば実現出来るという内容だ。

  僕が質問しようかと思った時、その機先を制するように、A次長が訊ねた。「Gよ。あと5ヶ月も無いんだよ。そうすりゃ出来るというのは理屈の話。間に合うのかよ?」「充分とは言えませんが、間に合うと思います」「H社が営業店事務システムの開発では1~2年は掛かっているんだよ」「・・・」。

  今度は僕の部下のLが「『分割払い保険料管理システム』について全く触れられていないけど、それはどうなるの?」「それは本当に必要なのかどうか疑問ですので、今回の対象から外してあります」。

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4月 21, 2016   3 Comments

あるシステム統合(23)

  会議後、僕・D部長(Bの大阪転勤後次長から昇格)・F社のA次長を含む対策本部のメンバー10人(両社から5名ずつ)を決めた。翌朝、H本社の会議室にメンバーを招集した。昨日の「経営統合実行委員会・拡大会議」に出席していない者もいるので、A次長にはそのあらましを説明して貰い、僕は「残された5ヶ月でシステム統合を成し遂げて、両社のシステム部門の底力を見せ付けよう!」と檄を飛ばした。

  Aもそうだろうが、このシステム部門の大ピンチに際し、僕が対策本部のH側メンバーに選んだのは、言うまでもなく最も信頼している部下3人(L・M・N)だ。何よりも、これまで僕のプロジェクト・チームで寝食を共にし、苦楽を共にして来たSE達だ。僕の檄など不要なくらいに全員気合が入っていた。

  年齢的には、Lが僕の2つ下、Mが3つ下、Dは6つ下、Nは11歳下である。F社側もほぼ似たような年齢構成だが、Nだけは特別に若い。Nを司令塔に加えたのは、彼のSE能力が際立って高いのでこのラウンド、Nに思いっ切り活躍して欲しかったことと、将来システムを背負うと期待している人材だけに、この貴重な体験をしておいて貰いたかったからだ。

  前置きは手短かにして、早速設計会議に入って行った。最初に「併存型システム統合」を実現する上で立ちはだかるであろう問題点の洗い出しを行った。こういう場合、準備がなかったり、経験が足りなかったりすると、何も思い付かないものである。

  この日に備えて2週間も前から、この日の来ることを想定して非公式に検討をさせて来たし、彼等もこれからぶつかるであろう問題(対策のためにシステム化が必要になる課題、或いは、事務ルールの変更や経営判断で対処すべき問題)を、充分想像出来るだけの経験を有している。

  流石にF側メンバーにしてみれば、急転直下、F寄せから「併存型システム統合」に方針転換がなされたようなものだから、一種戸惑いもあったろう。しかし、システム部門の大ピンチという状況は皆切迫感を持って受け止めていた。僕は、A次長の心模様が正しく部下達に伝播していると見た。

  初日だけで20項目を超える問題点が挙げられた。この日は問題の洗出しを行うことを第一目的にして、その解決策は2日目以降としてはいたが、実際には、問題が提起されると、その場でそれは立てるべき問題か否かを論議することになり、議論は解決策にも及ぶので、課題として確定すると、その解決策や解決の方向が同時に決まっていることも少なくなかった。

  概要設計に着手し、文化の日(11月3日)を含む3連休が明けるまでには、基本設計書が出来上がっていた。完成予想図に当る設計図とシステムの手直しや新規作成により解決すべき課題が列挙され、その解決の方向性も説明されるので、充分に詳細設計に突入出来る段階となったのである。

  強い危機感に裏付けられたメンバー達の、この数日間の異常なまでの集中力には、僕自身本当に驚かされた。この設計会議で、遠目ながらゴールまでの道のりが見えた結果、これで行けると、対策本部は本来の明るさを取り戻したのだった。

  同時に、H・Fの会社を超えた一体感が醸成されたように感じられた。これはもしかしたら、システム統合が始まって以来のことかも知れない。お蔭でここ何ヶ月も僕の心を占めていた、ずしりとした重石が取り払われたような気分がする。

  翌月曜日、対策本部はF社事務センターの3階会議室に場所を移した。ここがこれから5ヶ月間のシステム統合の司令塔となるのだ。この日から、長年共同開発パートナーだったN研究所の経験豊富な人物に対策本部に入って貰った。統合計画の進捗管理を彼等のノウハウで行うためだ。

  僕の頭の中では、対策本部は両社システム部門の司令塔役であることは勿論だが、単に指揮命令する機関としたくはなかった。この対策本部自体が全ての詳細検討を行う主体と定義した。勿論、手が足りなかったり、現行システムの不明点があれば、即、担当SEを呼んで内容を確認すると共に、彼も設計に参加させて完成させて行くつもりだ。

  こうして、合併より5ヶ月早く、僕等H社のSE5名は相手社の事務センターの一角を勤務先として仕事を始めたのであった。

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4月 20, 2016   No Comments

あるシステム統合(22)

  今回のシステム統合方針の大転換に対して、F社側がどう捉えているのか、その一つの側面として、当社(H社)の「経営統合実行委員会」事務局(経営企画室)も知っておいた方が良いだろうと、こっそり室長(現在は社長)には渡しておいた。

  「経営実行委員会」のF社事務局に問われ、システム部門のC部長が答えた結果だろうと推測するのは、さして難しいことではない。F寄せ凍結に反対で、僕とKが来ているのに最後まで会おうとしなかったのだから。

  Fシステムの現場を預かるA次長が、無責任にF寄せで間に合うと言う筈はない。経験のあるSEであれば、あの状況で「間に合う」と言い切れる者など絶対にいない筈だし、ダメだった時の責任は取りようがない程の大問題になるのは分かっているのだから。

  余談ながら、何年か後になってA次長から言われたことがある。「あの時神童さんが、あのままF寄せで何としても間に合わせよ! と言われたらどうしようかと思っていましたよ」と。

  大学の後輩の言う「F寄せを中止するのは、何か別な意図がある」との発言には、怪文書の内容のことだとピンと来たが、こちらは知らないことになっている。

  「別の意図とは、どういう意味で言っているのか分からないが、間違いなく合併に間に合わせ、合併当日から問題なく会社運営が出来る唯一の方法は、『併存型システム統合』で両社の現行のシステム機能を全て保証すること。それ以外の選択肢はもうない」とキッパリ言い切った。

  質問者は大勢いるが答弁は僕だけだ。Y副社長以外、僕に対して非難がましい発言をした者もいたことはいたが、憤懣やる方ないというような強い発言は無かった。それでも40~50人はいると思われる出席者が僕を正面に見据える目は、決して優しいものではなかった。

  部署によっては、これまでの合併準備作業を1からやり直さなくてはならないケースも起きるからだ。今回の方針変更であまり影響を受けない部署の人々のそれは、どちらかと言えば、僕に対する同情の眼差しのようにさえ感じられた。

  実は、この同情の眼差しが最もキツイのだ。「同情されたらお終い」と言われる勝負事とは違うが、それでもギリギリ身体を張って仕事をしている者にとって、苦境に陥った時の他人の同情は、突っ張ろうとする自分の気持ちを萎えさせる。自分が惨めに思えて来る。非難の方がどれだけ良いか。反発心(なにくそ=バネ)を生むから。

  質問に受け答えしながらこんなことを考えた時、ふと、先程の大学の後輩の質問は、C部長に答えさせるべきだったなと思った。そう言えば、何でC部長は僕の隣にいないのだ。システム統合の責任者は、いや、今日の被告は、僕とC部長の2人の筈だろう?

  遅ればせながらこのことに気付いて会場を見回してみるといた。C部長は、会場の左壁に沿って並べられたオブザーバー席後方で、事務局メンバー達に紛れてチャッカリ座っている。彼は一体何をするためにF社システム部長の肩書を付けているのか?

  Y副社長が会議を締め括るようだ。「もう2度目の頓挫と方針変更はあり得ない。絶対に間に合わせるように。これは業務命令である」と有難いお言葉。どうやら「併存型システム統合」への方針変更が認められたらしい。それにしてもY副社長は随分偉そうな言いようだ。僕より1歳年下なのに。

  いろいろな意味で僕にとっては腹立たしくもあり、惨めっぽくもあった最悪な「大衆裁判」ではあったが、兎も角、狙い通りの結論が出て会議は終了した。暫く立ち上がれなかった。疲れたぁ・・・

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4月 20, 2016   No Comments

あるシステム統合(21)

  これにはつい、若き日の大学紛争のある場面が脳裏に浮かんでしまった。昔懐かしい、「大衆裁判」のようだと思ったのだ。大学の学長や学部長を集会場所に引っ張り出して、学生たちが様々糾弾するあの場面だ。

  しかし、それとは根本的に違うのは、糾弾側も被告席の僕も同じ船に乗っているということだ。この船が無事目的地に着く方法は一つしかない。彼等もシステム号の船長(僕)の言うことを渋々でも聞かないことには、この船は沈没するのだ。

  Y副社長も、「神童、お前はどけ! あとは俺が直接指揮を執る」とは言わない。言えない。今日集まっている両社の部長達にしてもそういうことを言える人間はいない。自分で言うのも憚られるが、このシステム統合の大ピンチを救えるのは僕だけだ。と自分に言い聞かせて、全く動じないフリをする。

  Y副社長に促されて、ある部長が手を挙げた。見ると彼はF社の本社営業関連本部の部長で、大学の後輩だった。1ヶ月前程、本社でわざわざ僕を捉まえて、同じ大学の後輩だと言って挨拶してくれた人物だ。彼は立ち上がって次のような発言をした

  「『分割払い保険料の管理システム』が必要だとか、現行の『代理店システム』はH社側にとって不可欠だとか、そういう議論があったことは聞いています。会社同士が合併するのだですから、そういうことを言い合っていたら、出来るものも出来なくなるのではないですか? この際、Fシステムのままを受け入れて何も加えないで合併を迎えれば何の問題もないと思うのですが」。

  「それは、例えば方針をH寄せにして、T自動車向けの様々なシステム機能は諦めるのと同じことですが、その場合でも貴方は問題なしと言えますか?」と僕。彼は「いや、そういうことではなくて、F寄せを中止するのは、何か別な意図があるのではないかと感じてしまう部分があったものですから」と言って着席した。 

  この発言には背景がある。数日前、C部長との会談のために僕とKがF社に押し掛けた時、遂にCは現れなかったが、F社の業務総括部長と3人の「事務・システム統合部会」として「併存型システム統合」への方針変更を決めた直後のことだ。

  我がH社システム部門の部下が、F社の担当者とのメールのやり取りをした時に、F社メールの中に怪文書が混じっていたと言って僕のところに届けてくれたのだった。

  その文書には、今回、システム統合方針が「F寄せ」から「併存型」に変更された背景として、とんでもないことが書かれていた。

  要約すると、「システムを除く他の分野の統合は、殆どがH社のやり方が採用されたが、システムだけF寄せになった経緯がある。しかし、X社長は、システムの主導権がFに握られることを危惧して、方針変更出来るこのギリギリのタイミングで、主導権をH・F対等に戻したかったのではないかと推測される」というものだった。

  更に、「システム部門は、F寄せ方針を変えずとも合併に間に合うとの見解であるのに、H社が強引に方針変更しようとしている状況は、この推測に妥当性を与えるものである」と書かれていたのだ。

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4月 19, 2016   3 Comments

あるシステム統合(20)

  10月末日、「統合実行委員会」(両社副社長主宰)は拡大会議として開かれた。両社の本社部門の部次長は任意で参加出来ることになっていたようで、僕が会場に入った時には、セミナー形式(学校形式)の座席が設えられた大会議室に、既に空がないくらいに大勢が駆け付けていた。

  両副社長が議長として教壇の位置に並んで座り、僕はその右横に置かれた席に1人着席している。覚悟はして来たものの、こういう座席だとは思っておらず僕は少し面食らった。大会議室でロの字に並んだテーブルの一角で僕が説明を行うものと思っていた。

  何だか被告席に座らせられたような気分になった。システム統合の方針変更を両本社に納得させるためには、避けて通れない会議なのだと改めて覚悟を決めたところで、開始時刻となり、いよいよ会議が始まった。

  冒頭、Y副社長が、「神童から、これまで進めて来た方針では合併までにシステム統合が間に合わないので、それを一旦凍結して、新しい方針に切り替えて間に合わせたいと、唐突なる申し出があった」と説明し、「各分野で合併作業を進める皆にも大いなる悪影響が出ると思うので、一緒に聞いて貰おうと集まって貰った」と述べた。

  言葉の端々に、「神童はけしからん」とのニュアンスが込められているのは、致し方ないのかも知れない。Y副社長に、まず、何故計画が頓挫したのかから説明せよと促され、僕が状況の説明に入った。

  僕は、X社長に説明し、Y社長にも説明して今回3回目だから、要点は整理して話せたと思っている。だが、Y副社長は「これまで何度も、統合委員会や統合実行委員会でシステム統合は順調と報告をして来たのに、何で、急に頓挫したという話になるのだ。その説明にはなっていない」と突っ込んで来る。

  「経営統合実行委員会」の責任者としては、システムが間に合うかどうかの心配よりも、不意打ちを喰らったことの方を怒っているのか。仕方ないので、開発フェーズの最終段階でH・F双方の相手システムへの理解不足・誤解・思い違いなどが多発して、作業の後戻りややり直しなどが顕著になってしまったことを説明した。

  Y副社長は更に、「それが起きないように、これまで半年の時間を掛け、擦り合わせてやって来たのではないのか?」と糾弾する。「お前のマネージメントがなっていなかったからだ」と言いたいらしい。

  この場では、半分のシステム(H・F)がブラインドで、誤解無くやる方が難しいとの反論は勿論しなかった。「やってみなければ分らないことが多過ぎたことは認めます。ですが、そこで理解できたことをベースにするので、新方針は絶対に間に合わせられます」とミエを切った。

  副社長の「何故頓挫したのか」ばかりの遣り取りから先に進めなくてはと思った。こんなのは今日の本論ではない。新方針のシステム統合完了後、僕は社長から処分を受けることになっているのだから、計画頓挫の責任はそれで充分だろう。僕は強引にその先に話を進めた。

  僕は「皆さんの合併準備作業に大きな影響を及ぼすことは重々承知しており、誠に申し訳なく思いますが、F寄せ作業はどう足掻いても間に合いませんので、一旦ここで凍結して、合併後速やかに再開させて頂きます」と宣言してから本論に入った。

  「会社合併までに残された時間は僅か5ヶ月間です。新会社としてスタート出来るようシステムを間に合わせるため、H・F両システムをそのまま稼働させて従来機能は全て保証した上で、一つの会社として必要なシステム手当てのみを施す方針で、今日から再スタートを切りたいと思う」と「併存型システム統合」の説明を行った。

  尤も、F寄せは全部凍結するのではなく、主力商品の自動車保険や他の幾つかの保険商品のシステム統合は、これまでの開発でほぼ予定通りに仕上がって来ているので、「併存型システム統合」の中でも、それらは活かす検討は続行するつもりではある。但しそのリリースは、合併と同時ではリスクが高いので、合併の2~3ヶ月後のスタートとする。

  自動車保険や他の主力商品の契約計上など、事務量の大半が費やされる保険契約処理で、営業現場にHとFとの両方が存在する「事務の併存」の期間が長くなるのは好ましくないからだ。

  今日集まっている両社部長達の関心事で言えば、これら商品の統合がどうなるのかが焦点の一つだったから、少し丁寧に説明したつもりだ。

  それについて、何人かから質問があり、応答が終わった時、Y副社長は「システムの前提が変ってしまうのだから、皆の統合準備作業に於いて、大変な見直し作業やら追加作業などが発生する筈だ。冗談じゃない、という気分が渦巻いていることと思う。この際、一言言いたい者はいないか?」と、悪意に満ちた進行振りを発揮してくれた。

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4月 19, 2016   1 Comment